保険未加入企業の排除
date:2011/11/01
事業体である建設連合国民健康保険組合における厳正な資格確認を継続的に行うことを目的とした組合員資格確認調査が11月より開始されています。これは主として、組合加入後の法人格取得或いは個人事業所の従業員数増加による建設連合国保加入資格の喪失に、厳格に対処する施策の一環として実施するものです。
一方、国土交通省においては、建設産業戦略会議がまとめた「建設産業の再生と発展のための方策2011」に、保険未加入企業の排除が盛り込まれたことに対応して、今年度の公共事業労務費調査で保険加入の実態を調査し、社会保険等を負担しない事業所に対して保険加入を徹底する方針です。
当該調査では、事業所の規模を詳細に区分し、法人・個人の企業区分を追加した上で、雇用保険適用事業所番号や健康保険名、適用事務所整理番号、厚生年金保険番号等の記入欄を新設して関係資料も確認することで、従来よりも詳細なデータを蒐集、調査結果は年度末までに取りまとめる予定となっています。
これまでの国交省の調査では、元請・下請建設会社に所属する従業員の保険加入率を調べた結果、元請より下請、更に1次下請より2次、3次下請と末端へなるほど未加入従業員が急増していることが判明しています。特に、大都市圏で保険加入率が低い傾向にあり、調査結果からは、建設投資の急減を受けて低価格での受注競争が激化し、従業員の社会保険未加入による経費削減によって、少しでもコストを抑制して受注を獲得しようとする企業の行動が見て取れます。
しかし、保険未加入企業の排除を徹底すれば、多くの事業所が倒産に追い込まれる可能性が増すことは必然であり、業界全体でダンピング競争に歯止めを掛け、健全な市場を整備する過程では、倒産の増加に加え、企業が保険加入の負担増を抑えるために賃金の引下げを図り、或いは従業員を解雇する可能性もあります。
建設産業における過剰供給構造の解消に向けて、諸施策を強化していく取組みの反面では、従業員を解雇して個人請負技能労働者である一人親方に仕立て、仕事を外注するという従前からの悪しき傾向を触発することにもなりかねず、実質的な労働者でありながら請負契約とする偽装請負を助長する悪循環に陥る事態が懸念されます。